水中ドローンで川を綺麗にする ——京急×リバネスによるものづくりワークショップ

2020.04.01 / EVENT

2020年2月11日、梅森プラットフォームに店舗を構える仙六屋にて、京浜急行とリバネスによるワークショップが開催されました。京急とリバネスは、沿線地域の課題を次世代と共に解決することをミッションにしたワークショップに共同で取り組んでいます。今回は大田区を流れる呑川を綺麗にするため水中ドローンを製作するというもの。

さて、この呑川、地元の方以外は聞きなれないと思いますが、歴史は古く氷河期より存在し、今まで氾濫を繰り返してきました。かつては生態系豊かな川も、高度経済成長期以降は、水質が悪くなりあまりよいイメージを持たれていません。呑川が綺麗になったら・・・。

今は当たり前の風景になってしまい、考えもしなかったことかもしれませんが、本当に呑川が綺麗になれば、蒲田近辺の環境は大きく変わっていくことでしょう。

そんなプロジェクトの実現に向けて、小学生から高校生まで精鋭達が集まりました。3つのチームに分かれて水中ドローンを製作し、成果を競います。その1日の様子を追ってご紹介したいと思います。

科学技術の発展と地球貢献を実現するーLeave a Nest リバネスの取組

京急と共にワークショップを運営するリバネスとはどんな組織でしょうか。近年、教育、人材、研究、創業、4つのプロジェクトを柱として活動しています。サイエンスキャッスルを始め、企業や自治体、教育機関などと様々なプロジェクトが進行しております。

スタッフのみなさんのほとんどが元は研究者、その後教育や人材育成、資金調達等々…仕組を生み出し将来へと繋いでいくことに興味を持った方が多いようです。今回ご紹介するワークショップも、研究者からリバネスに入社した若手メンバーが中心となって開催されているものです。

チームをつくる

ワークショップの始まりはまチーム分けから。小学生、中学生、高校生とグループが分かれます。そして、今回は、地元の工場や企業から、経験豊かな職人、研究者、経営者が各チームに加わります。

自己紹介の後、チームを形成するにはまずは「実践」、ということで、マシュマロチャレンジという課題に7分間で取り組みました。

会場の熱量が一気に上がり、チーム内のキャラクターや役割も徐々に見えてきます。さて結果は・・・。どのチームも最初から最高の結果は出ませんでしたが、よい雰囲気となったところで本題へ。


プロジェクト進行とコミュニケーション

1日の中で、製作→プレテスト→フィードバック→コンペティション→最終調整と盛りだくさんの内容です。限りある時間のなか、上手にコミュニケーションをとっていくことが重要です。

子供達が中心となってコミュニケーションをとっていくチーム、サポートの大人が経験によるヒントを出しながら進行するチーム、チームによって少しずつ進み方にも特色が表れます。


設計し、組み立てて、動作を確認する、その間には、様々な仮説とテストが繰り返されます。
  
夢中になって進めていく、この感覚は、大人たちだけの世界ではなかなか得ることのできないものかもしれません。子供達の影響を受け、運営に関わる大人たちも引き込まれているようでした。

コンペティションのプールを設え、ドローンを動かすこの様子・・・大人チームが参加しても盛り上がりそうですね。

試行錯誤の繰り返し

プレテストでは、浮力や推進力を確かめつつ、予期していなかった課題やその解決を考えていきます。例えば、ドローンに付帯するケーブル、このケーブルが抵抗となり、思うような動きを制限されてしまいます。各チーム、ケーブルを束ねたり、浮きを付けたりと、ドローン本体の動きの自由度を獲得していきます。


小学生から高校生まで、ここでは年齢差は関係ないようです。議論の様子も、ドローンのクオリティも、堂々たるものです。

その後、いくつもの議論と調整を繰り返し、コンペティションの時間が近づいていきます。コンペティションでは、プールの水を不透明にし、幾つかのアイテムを水中に点在させます。各チーム、ドローンで水中を探索し、そのアイテムをいかに正確に地図に記すことができるかという課題。

リバネスの運営メンバーはプールを設営し、入浴剤を投入し、アイテムを水中に設置します。真冬に外で水を扱うのは寒くて大変ですが、それでもみんなどこか楽しそう。話を聞くと、リバネスの滝野さん、以前は数ヶ月も船上に滞在し、海洋生物の調査を行っていたそうです。

プレテストで、思うようにいったところ、思うようにいかなかったところ、本番に向けての過ごし方が結果に大きく左右します。しかしこういった、各ポイントでの過ごし方、時間の使い方、コミュニケーションの取り方もそう簡単ではないようです。


いよいよコンペティション!水中ドローンを捜査するメンバーは、プールを直接見ることができません。カメラで捉えた映像を見ながら捜査し、発見したものを仲間に伝えていきます。地図作成の担当者は、それを聞いて、座標を確認しながらメモを取っていきます。

制限時間内にドローンをスタート地点に戻すことができない場合は失格。各チーム、より長い時間を調査したいと思いつつ、いつ探索を完了させるかにも緊張感が漂います。カメラからの情報だけだと、水中ドローンをスタート地点に戻すことは決して簡単な作業ではありません。

コンペティションでは、トラブルに見舞われるチームもありました。ごく初歩的なミス。プレテストや、その後の時間の使い方の差が、思わぬところで表れます。ほんのちょっとのことで、探索が全くできなくなってしまう、ということも起こります。

さて、結果はどうだったのでしょうか。優勝したのは中学生チーム!京浜急行から、マグロ付切符の商品、皆大喜びです。

コンペティションを終えて

最終的な結果は、プレテストのときの状況とは違ったものでした。こうしたワークショップを繰り返し開催しているリバネスの方々によると、進行の様子と結果の関係には、いくつかの決まったパターンがあるようです。

例えば、中間発表で1位になったチームが最後には伸び悩んだり、検証少なくすぐに動作実験するチームも後々伸び悩んだり。高校生チームは、中間状況からの安心感が、最終調整の不足、本番へのトラブルの要因になったと言えるかもしれません。

こういったワークショップに参加した学生が大人になり、研究者となっていく、その時間と育成のサイクルへの姿勢についても、興味深い要素が含まれています。子供達にとってのこの時間がどのように育っていくのか、また、大人たちもその子供達の様子に大きく影響を受けているとも言えそうな1日となりました。

(テキスト:@カマタ石井大吾)

リバネス
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仙六屋
http://senrokuya.jp/