指輪と洋服と、永遠にまわり続けるコマと ——ある土曜日の高架下のものづくり

2020.11.28 / REPORT

10月24日、秋晴れの気持ち良い土曜日。梅森プラットフォーム高架下ではものづくりに関連する地域にひらかれた様々なイベントが開催されました。今回はその様子をレポートします。

コマを通して町工場の技術を体感する「町交場(まちこうば)」

昨年に引き続き、梅森プラットフォームの屋外スペースで、町工場の方々が中心となって結成された「おおたコマプロジェクト」主催による親子向けのワークショップが開催されました。


写真:子供達で賑わう梅森プラットフォーム、KOCAの前のオープンスペース(写真:瀧原慧)

プログラムの目玉のひとつはコマのオリジナルパーツ作成。ウレタン・ゴム・コルク材などの素材の型抜き、アクリルパーツのネジ穴あけ(タップたて)、プラスチックの射出成型によるパーツ制作など、大人でもパッと聞いただけでは何を実際にどのようにやるのかわからない、専門的な町工場のものづくり技術を、「コマづくり」を通して楽しく学び体験することができる充実のプログラムです。


写真:射出成型、タップたて、真空成型など様々な機械を体験できる(写真:瀧原慧)

あらゆるものがお金を出せば簡単に手に入る世の中になってしまいましたが、小さい頃にものづくりの現場に触れることができる機会があることはとても貴重ですね。

どんな機械で加工するのか?
素材ごとの質感や特性に違いがあるのか?
加工方法の特徴によってどんなものが作れるのか?作れないのか?

身の回りに様々なプロダクトが溢れていますが、日常生活ではその物の成り立ちを考えることはほとんどありません。でも、当たり前ですが一つ一つの製品は誰かによって設計され、加工され、組み立てられ私たちの生活を支えているわけです。当然、その背後には様々な失敗や創意工夫の蓄積もある。そんなことをしみじみと思ってしまいました。まちのなかにものづくりの現場が溢れている、そんな社会で育った大田区キッズたちの将来が楽しみになりました。

ちなみに「おおたコマプロジェクト」のコマは精度がめちゃくちゃ高いので、各パーツの中心軸が正確に出ており、永遠にまわりつづけます(笑)

指輪と服と写真と:KATEI-TEN過程展

さて、町交場のワークショップで子供達のテンションが最高潮に達している横では、全く異なる世界観の展示が行われていました。KOCAのA棟を使って行われているKATEI-TEN過程展です。去年に引き続き、町工場と現代美術作家のコラボレーションによって生まれたSmall Factory Ringの新作展示に加え、KOCAのC棟に新しくアトリエを構えたファッションデザイナー伊藤弘子氏が主宰するHISUI HIROKO ITOのコレクション展示です。


写真:Small Factory RingとHISUIH HIROKO ITO


写真:KATEI-TENのポスター

入り口すぐのラウンジスペースではSmall Factory Ringの展示販売が開催されています。Small Factory Ringは、現代美術家である田添かおり氏と大田区の町工場が中心となって制作しているジュエリーのシリーズです。以前に梅森の記事でも紹介させていただきました
過去の関連記事:「2019年に開催されたKOCAのものづくりイベントを紹介」

今回は、翡翠を使った新作も展示+販売していました。翡翠の繊細で有機的な感じと、スンテレスリングのゴツゴツとした存在感のコントラストがかっこいいです。KOCAの入居者である瀧原氏も関わって実現した城南工業との新プロジェクトPunch Hole Projectも展示されています。

奥のフリーアドレススペースの一部と2階の角部屋はHISUI HIROKO ITOのコレクションの展示。現代アーティスト・さいあくななちゃんとのコラボレーションによる作品です。かなりパンクな一点物の洋服たちがKOCAの空間を彩りました。

壁に展示してある北田理純氏が撮影したコレクションの写真も魅力的です。背景となっている撮影現場は、近くの関鉄工所。不思議と、モデルさんを含め、独特のパンクで荒々しい雰囲気が服と場所と一体となって、独特の世界観を生み出しています。配布されていたHISUI HIROKO ITO の2021SSのパンフレットも素晴らしいです。


写真:KATEI-TENのオープニングイベント


オープニングイベントのときのトーク(画像をクリックするとyoutubeで視聴できます)

何気ない土曜日にクリエイティブで楽しいものづくりでまちに彩りを

商店街を歩いているだけでは、普段と変わらないいつもの土曜日でしたが、梅屋敷駅から大森町駅に向けて京急線沿いを歩いていくと、普段は隠れているものづくりのカルチャーや、人々の繋がりとエネルギーが高架下空間いっぱいに溢れていました。

梅森プラットフォームが生まれてからまだ2年目ですが、もともとあった関係性を含め、新しく魅力的な活動、創作、コラボレーションが少しずつ生まれている、ということを感じられる日となりました。今後もこのように地域にひらかれたイベントやワークショップの拠点として梅森プラットフォームが活用されると良いなと思います。

おわり(文責:@カマタ・連)